2024/09/01 09:49

Nishiwaga Pedals(にしわがペダルズ)の有馬です。

2024年9月販売開始のブースト・オーバードライブペダルGoldenRoadのご紹介です。
GoldenRoadは、KLON Centaurを参考にして製作したペダルです。
ブースト・オーバードライブペダルとしていますが、単体ではそれほど歪みません。

個人的には、CH1をバッファとして常時ONで使用し、CH2はブースターまたは、ローゲインオーバードライブとして使用しています。


● コンセプト
このペダルを製作しようとしたスタート点が、岩手県西和賀町にある鷲ノ巣(わしのす)金山跡とその歴史です。
数年前から、この風景が好きで足を運ぶことがありました。
最初に見た際には、不思議と魅力がある場所だなと感じたのですが、歴史を知ることでさらに魅力が増しました。
その歴史というのが、平安時代後期に平和社会を目指し平泉文化を作った奥州藤原氏の歩みです。
平泉文化の繁栄を支えた理由に地理的な優位性と、特産物である金と馬があったそうです。
金については、周辺地域で豊富に採掘することができたそうで、その中の一つに鷲ノ巣金山があったようです。

そして、黄金文化ともいわれ、三代秀衡の時代に絶頂期を迎えたそうです。
平泉~横手の道のりを秀衡街道といい、「黄金の道」ともよばれています。

「黄金の道」、Gold Road。
エフェクター名としては、「GoldenRoad」の方が響きとして好きだったのでこちらを使うことにしました。

GoldenRoadという名称のエフェクター製作の始まりです。


● サウンドの方向性検討
GoldenRoadという名称だけが決まった状態でしたが、ケースの塗装はゴールド基調にすることは頭にありました。
ゴールドのケースから想像できた音色は、煌びやかさとギターに寄りそう存在感。
イメージとしては、ローゲインでギターの良さを引き出すような上質さ。

この時点では、そこまで明確にサウンドのイメージはできていませんでしたが、ゴールド筐体といえば思いつくのがKLONのCentaur。
これまで、試したことがありませんでしたが、GoldenRoadを製作するためのヒントになると考えました。

そこから、ケンタウルス系のエフェクターを入手。
本当は、本物のCentaurを試してみたかったのですが、高価で手が出ませんでした。
入手後、さっそく弾きこみ。
ギターサウンドに豊潤さが加わり、伝説的なオーバードライブとしての地位を確立している理由が少し分かったような気がしました。

ローゲイン範囲では、自分がGoldenRoadに望む音がそこにあると感じましたが、ゲインを上げていくと少し望んだ方向性から離れていったため、この豊潤さをメインにしたローゲインオーバードライブを製作しようと決意しました。


● 製作開始
製作開始時点で、うっすらと2チャンネル仕様にすることは決めていましたが、回路を一度動かしてみないとわからないことがあったため、まずは1チャンネル分の回路設計を始めました。

回路設計の次は、基板設計です。
基板設計といっても、Nishiwaga Pedalsとしてはユニバーサル基板でハンドワイヤードが基本なので、なるべく短距離配線で、なるべく小スペース、それでいて製作しやすい基板にすることが必須です。

今回の場合は、初めて昇圧回路を扱い、電源ラインの種類も増えるので、いかに小スペースで収めることが出来るかというのが重要なポイントでした。
数日後に、なんとか1チャンネル分は完成したのですが、予想以上にスペースをとることになりました。

しかし、基板自体は問題なく動作確認をクリアしたので、音作りに取り掛かりました。

試作基板は、部品の交換を前提に製作しているので、部品を交換しては弾き、交換しては弾きを繰り返して好みのサウンドに仕上げていきます。
ギターの違い、アンプの違い、その日の体調などによっての違いにより、音の聞え方は変わるものなので、この作業は何日もかけて行います。

そして、なんとか自分の望むものが完成。
1チャンネルで色々と試して、2チャンネル目の配線を行いました。

この作業は、思ったより時間をかけずに終了しましたが、本番の基板では小スペース化を目指さないとケースに組み込むことが難しいと思ってはいました。

しかし、音作り用の基板としては完成したため、じっくりと音作りを行いました。
この作業は、数日かけて終了。

これで回路は決まったので、ケースに収まるような基板配線の検討開始です。

音作り用の基板配線から、あまりに変更するとこれまでの意味が薄れてしまうため、なるべく配線経路を変えず小スペース化を実施。
実際に配線を修正するのは気の長い作業になってしまうため、PC上で何度も部品配置、配線の移動を繰り返しました。
そして、なんとかケースに収まるサイズ感に。

この後、ケースに仮組みを行い動作とサウンドチェック。
問題なかったので、ケース内配線検討、ケース塗装検討、コントロールつまみの検討を経て完成までたどり着けました。


● 一つの不安要素
自分用の1台目が完成し、音出しまで終了。
思ったようなサウンドで、完成したことを実感していました。

ただ、一つ製作開始段階から不安要素がありました。

それが、サウンドの分かりにくさです。

バッファ、ブースト、ローゲインオーバードライブ。
ローゲインオーバードライブについては、やや歪み成分が加わるため変化を感じやすいですが、バッファ用途に関しては伝えるのが難しいと思っていました。

実際にギターを弾くとその違いは目をつむっても分かるのですが、説明がないと分かりにくいというのがこのペダルの欠点だと思います。

紹介用の動画も作成しましたが、分かりにくさを解消するため少し補足させていただきます。

まずは、2コントロールのCH1から。

CH1は、ブースターとしても使用できますが、個人的にはバッファとして使用しています。
コントロールは、Tone、Levelのみですが、昇圧回路による広いヘッドルームが特徴で、ギターのうまみを引き出します。

Toneは、センター(12時)付近でフラット傾向になりますので、センター位置から可変することをおすすめします。
Levelは、やや高めの設定ですので、バッファ用途の場合は9時周辺になるかと思います。

個人的には、ギターからGoldenRoadに接続し、その後段のアンプやエフェクターで歪みサウンドを作っています。
バッファ用途で使用した場合は、後段の少し広がったサウンドを、ある範囲に収めるような変化を感じることができます。

これにより、ギターサウンドが音像的に見えやすくなります。
しかも、後段の歪みサウンドには悪い影響を与えにくいので、おすすめの設定といえます。


続いて、4コントロールのCH2についてです。

Gain、Level、Treble、Bassの4コントロールで、CH1との一番の違いはゲインを設定できる点です。

GainはMaxでもそれほど歪まず、軽く弾けばクリーン寄り、強く弾けば軽めのクランチ寄りといった歪み感です。
個人的には、CH1のバッファと合わせてローゲインオーバードライブとして使用することが多いです。

ブースター用途の場合は、GainとLevelの調整でCH1よりも幅広い歪みサウンドを作ることが可能です。
Gainを上げていくと、やや高域側が丸みを帯びてくるため、少しTrebleを上げて調整すると扱いやすいと思います。

また、GainをMin、Trebleをセンター、Bassをセンターとすると、CH1のToneセンターのサウンドに近付きます。
回路自体は、似ていますが部品がやや違うため、サウンドは若干異なります。
CH1は、ややシャープな印象、CH2は、ややウォームな印象といったところです。

現代的なサウンドと、ややビンテージ感あるサウンドを狙っています。


● 動画のご紹介
最後に動画のご紹介です。

さきほどの「一つの不安要素」のように、この動画から良さを感じるのは少し難しいかもしれません。
やはり、アンプの前に立ち、実際弾いた生の音は再現できませんでした。
特に、バッファ用途については私自身も動画の音だけでは判断できないと思います。
したがって、さきほどの「一つの不安要素」を読んでいただき理解を深めていただけると幸いです。

動画の構成は下記の通りです。

00:00  ストーリー
00:50  外観
01:19  シングルコイルピックアップによる演奏
02:02  ハムバッキングピックアップによる演奏
02:58  バッファとして他エフェクターの前段に配置(Snowmelt)
03:42  バッファとして他エフェクターの前段に配置(Warabi V2)
04:04  バッファとして他エフェクターの前段に配置(Katakuri V2)
04:30  アンプでクランチサウンドを作りブースト
05:04  CH1 Tone可変
06:07  CH2 Gain可変
06:50  CH2 Treble可変
07:24  CH2 Bass可変

実は、ストーリーの部分を作成するだけで、かなり時間を要しました。
なるべく少ない文字数で表現したかったのですが、なかなかに難しいものです。


それでは、GoldenRoadをよろしくお願いいたします。