2023/12/11 16:17
Nishiwaga Pedals(にしわがペダルズ)の有馬です。
2023年10月販売開始のハイゲインディストーションペダルKatakuriのご紹介です。
Nishiwaga Pedalsの第二弾エフェクターとして、2023年2月あたりからハイゲインディストーションペダルの製作を考えていました。
●名称の由来
まず考えたのが、外観となるケースのカラー。
ハイゲインディストーションペダルということで、重いサウンドをイメージさせるブラック系か、攻撃的なサウンドをイメージさせるレッド系か。
Nishiwaga Pedalsは、岩手県西和賀町の豊かな自然環境からインスピレーションを得たエフェクターの製作を目指しているため、ブラック系またはレッド系で、西和賀町に由来のあるものを考えていました。
そして、このイメージに合ったのが厳しい冬を越え、春に咲くカタクリの花。
下を向いて咲く花のため、ディストーションサウンドとは対極のようにも感じましたが、燃えているようなシルエットにも見え名称として採用しました。
●サウンド構想
エフェクター名称をKatakuriに決定し、サウンドの構想を始めました。
それに伴い、市販されているディストーションを入手しサウンドの方向性を考えました。
検討材料としていたエフェクターは、下の動画の通りです。
個人的には、ハイゲインサウンドで以前から気に入っていたのがブラウンサウンド系だったため、当初はその系統の回路を検討していました。
しかし、サウンドの構想としてはローゲインからハイゲインまで、一通り使えるエフェクターにしたかったので少し問題が出てきました。
それが、ローゲイン時の歪み感です。
ミドルゲイン~ハイゲインでは、気持ち良いサウンドでしたがローゲインには向かないと感じていました。
そのため、ブラウンサウンド系の回路構成とは別の回路構成も検討し始めました。
そして、辿り着いたのがオペアンプを使用し、ダイオードでクリップさせる方式です。
特に珍しい回路ではありませんが、ローゲインからハイゲインまで使えるサウンドにするために、ややゲインを下げたチャンネルとハイゲインのチャンネルの2チャンネル構成とすることにしました。
この2つのチャンネルは、回路構成はほぼ同一ですが、歪み量、歪みの深さ、周波数特性を変えています。
これにより、ゲイン幅の広いディストーションになったと思っています。
Input端子側のRightChannelがローゲイン~ミドルゲイン系で、Output端子側のLeftChannelがハイゲイン系という並びです。
●基板設計
Nishiwaga Pedalsでは、少量生産のハンドメイドエフェクターを製作しています。
そして、サウンドの要となるのが回路自体と回路基板です。
現代では、プリント基板が一般的で部品もチップ部品が一般的になってきました。
私自身もこれまでの業務経験でプリント基板には多く触れてきました。
基板実装メーカーにも何度も足を運んでいます。
量産には、最適な基板。
しかし、ハンドメイドエフェクターを製作するにあたり量産品にはできない魅力を持ちたいと考えていました。
そこで、1枚1枚個性が出るハンドワイヤード基板を基本にすることに決めました。
ユニバーサル基板にリード部品を取り付け、足と足を繋ぎ合わせる。
せっかくのハンドワイヤードなので、ハンダ付けしなくとも足と足とが接触した状態にして、固定用としてのハンダ付け。
時間はかかり、ミスも許されません。
作業手順は資料として作成し、同じ順番、同じ位置、同じ配線。
しかし、部品の足の曲げ角度によって生まれる違い。
この微妙な違いがハンドメイドの良さだと思っています。
プリント基板では、この個性はほぼ出ません。
ただ、個性が出たからといって表に現れずケースの中の基板。
サウンドへの影響も、そこまでは大きくありません。
ほんの少し、耳に優しい音が実現する感じでしょうか。
ギターのニュアンスも、少し出やすくなる傾向はあるかもしれません。
しかし、Nishiwaga Pedalsとしては、このハンドワイヤード基板に拘っていきたいと考えています。
●実際のサウンド
最後に動画にて実際のサウンドをご確認ください。
ハイゲイン、ミドルゲイン、ローゲインの順に弾いています。
ハイゲインはLeftChannel、ミドルゲインとローゲインはLeftChannelで弾いています。
LeftChannelの歪み量は、ハードロック系までをカバーしています。
メタルには不向きなサウンドです。
RightChannelの歪み量は、クランチ~軽めのディストーションサウンドまでをカバーしています。
基本的なコンセプトとして、トランジスタアンプでハイゲインサウンドを実現させるというペダルがKatakuriです。
線が細くならないように音作りを行ったので、トランジスタアンプでも温かみの残ったハイゲインサウンドを実現できると考えています。